◎ 傷は「あること」ではなく「折り曲げたときにどうなるか」で判断される
◎ 傷の原因は握りすぎと、刃を入れたまま引っ張ること
◎ 迷うならやり直す。そのための時間を作っておく
芯線に傷がついてしまう。
技能試験の練習を始めたばかりのころ、これが一番の悩みでした。丁寧にやっているつもりなのに、気づいたら傷がついている。何が悪いのかわからないまま、同じ失敗を繰り返していました。
この記事では、わたしが実際に試して効果があった2つの対策を書きます。

まず、芯線の傷は欠陥になるのか


対策の前に、判断の基準を確認しておきます。
技能試験の合否は、作品に「欠陥」があるかどうかで決まります。点数制ではありません。そして欠陥の中身は、試験を実施している電気技術者試験センターが公開しています。
電線の傷について書かれているのは、次の部分です。
5-2. 絶縁被覆の損傷で,電線を折り曲げたときに心線が露出するもの
ただし,リングスリーブの下端から 10mm 以内の絶縁被覆の傷は欠陥としない
5-3. 心線を折り曲げたときに心線が折れる程度の傷があるもの
(出典:一般財団法人 電気技術者試験センター『技能試験の概要と注意すべきポイント』令和7年2月)
ここから読み取れることが3つあります。
① 傷があること自体は、欠陥ではない
5-3は「心線に傷があるもの」ではありません。「折り曲げたときに心線が折れる程度の傷があるもの」と書かれています。判断は傷の有無ではなく、折り曲げたときにどうなるかです。
② 絶縁被覆も、同じ考え方
5-2も「損傷したもの」ではなく「折り曲げたときに心線が露出するもの」です。傷が入っていても、折り曲げて中の線が出てこなければ、この項目には当たりません。
③ リングスリーブの下端から10mm以内は、除外されている
ここははっきり「欠陥としない」と書かれています。圧着する部分のすぐ下は、作業の性質上どうしても傷が入りやすい場所です。そこは最初から除外されています。
ついでに、ケーブルの外装(シース)についても書いておきます。
5-1. ケーブル外装を損傷したもの
イ.ケーブルを折り曲げたときに絶縁被覆が露出するもの
ロ.外装縦われが 20mm 以上のもの
こちらも「折り曲げたとき」です。そして縦割れは20mm以上が欠陥。数字で線が引かれています。
判断基準の全文は、試験センターの資料で読めます。一度は目を通しておくことをおすすめします。
『技能試験の概要と注意すべきポイント』
https://www.shiken.or.jp/construction/upload/point2025_2.pdf
ただし、欠陥にならないからといって傷をつけていいわけではありません。傷がつく状態で練習を続けると、本番でも同じことが起きます。原因をちゃんと理解して、改善することが大事です。
芯線に傷がつく主な原因
わたしの場合、傷の原因は2つありました。
1つ目は握りすぎ。
ストリッパーを強く握ると、刃がケーブルに深く食い込みます。シースを切るはずの刃が、芯線の被覆まで届いてしまうんですよね。力を入れれば入れるほど、傷がつきやすくなります。
使い方の説明書にも「ハンドルを握り込んだまま剥ぎ取ろうとすると、芯線被覆を傷つけてしまうので注意」と明記されています。わたしはこれを最初に読んでいたはずなのに、実際の練習では守れていなかったんです。
2つ目は刃を入れたまま引っ張ること。
シースに刃を入れた状態のまま、そのまま引っ張ってしまうと傷がつきます。正しい手順は、刃を入れて切れ目を作ってから、いったん握りをゆるめて、シースだけを引き抜く動作になります。
YouTubeで確認してもらうと分かりやすいんですが、刃を入れてから握った手を離して、ほんの少し刃を横にずらし、切れ目のすぐ横のシース部分だけを軽く挟んで引っ張る。
するっと抜けます。シースはすでに切れているので、芯線に触れる必要がないんですよね。
工具そのものが手に合っていないときも、傷は出ます。わたしがVVFストリッパーを買い替えたときの話は、VVFストリッパーを2本買った結論のほうに書きました。
ここまで読んで、たぶん次に思うこと
判断の基準と、傷がつく原因を書きました。ここで止まると、たぶん次の3つが残ります。
いま傷がある。これは欠陥なのか
傷があること自体は欠陥ではありません。判断されるのは、折り曲げたときに心線が露出するか、心線が折れるかです。
とはいえ、その場で「これは大丈夫」と言い切れる状態は多くありません。迷ったなら、やり直したほうがいいです。
わたし自身の本番の話もしておきます。芯線の傷は、出ませんでした。ここから先に書く2つの対策を、練習でやり切ったからだと思っています。
代わりに、別のところで失敗しました。結線の間違いです。傷ばかり警戒していると、他が抜けます。
リングスリーブの下の傷は、本当に見逃されるのか
下端から10mm以内の絶縁被覆の傷は、「欠陥としない」と明記されています。解釈の余地なく書かれている部分です。
圧着する場所のすぐ下は、作業の性質上どうしても傷が入ります。そこは最初から除外されている、と考えて大丈夫です。
では、傷をつけないためにどうするか
ここから先が、この記事の本題です。わたしが実際にやって効いた方法を2つ書きます。ひとつは回数、もうひとつは「わざと傷をつける」練習です。
なお、もう試験が終わって結果を待っている方は、ここまでで大丈夫です。判断の基準は上に書いたとおりです。
これから練習する方は、この先が本題になります。
対策1:圧倒的な練習量をこなす 短時間でいい とにかく回数を
芯線の傷は、感覚的な部分が大きいです。
どれくらいの力で握ればいいか、どのタイミングで握りをゆるめるか。これは文章で読んでも体に入らないんですよね。手が自然に動くようになるまで、繰り返すしかない部分があります。
わたしはそもそも不器用です。プラモデルも途中で挫折するくらいで、細かい作業が得意ではない。だから回数をこなすことを念頭に置いて練習しました。
最初、メルカリで5メートルのVVFケーブルを購入して、練習に使いました。毎日ランプレセプタクルの練習をしていたので、5メートルはあっという間に使い切ってしまって。その後、10メートルのケーブルを2回追加で購入しています。
これとは別に、技能試験対策用のセットも用意していたので、練習用のケーブルは惜しみなく使える状態にしておきました。
「VVFストリッパーは握る⇒回転⇒握りをゆるめて引き抜く、というコツがある」と説明されていますが、この動作を体に染み込ませるには、とにかく反復するしかありません。
毎日5分、10分のランプレセプタクルの練習。
地味に見えますが、これがわたしの場合は一番効きました。
その練習で使っていた工具と材料は毎日の練習で使っていた工具と材料に書いています。特別なものは何も使っていません。
対策2:わざと傷をつける練習をする
これは少し変わった方法かもしれませんが、実際に効果がありました。
練習用のケーブルを使って、「意図的に芯線に傷をつける」練習をしたんです。
なぜこんなことをしたかというと、失敗を恐れたまま本番を迎えると、手が縮んでしまう可能性があると思ったからです。「傷をつけたらどうしよう」という不安が、逆に動きを硬くしてしまう。
「どこまでどうやったら傷がつくのか」を先に知っておけば、それをやらなければいいだけです。
実際にわざと傷をつけてみてわかったことがあります。
傷がつくのは、刃を深くまで刺し込んでしまったときと、刃が入ったまま引っ張ったときでした。この2つのパターンを体で理解してから、逆に「これをやらなければいい」という感覚が明確になりました。
失敗も練習ならば、失敗ではないんですよ。何が問題なのかを体で覚えるための練習なので。
ここまで書いてきたことは、道具でいくらか楽になります。
わたしは最初、別のメーカーのVVFストリッパーを使っていました。ただ、使っているうちにだんだん切れにくくなっていきました。 おそらく力の入れすぎだったと思います。道具というより、わたしの使い方の問題だったのかもしれません。
それでホーザンのP-958に買い替えました。
使ってみて分かったのは、力はほんとうは、あまり要らないということです。コツをつかめば、パパッと剥けます。
力を入れているうちは、たぶんまだコツをつかめていません。 そして力を入れるから、芯線に傷がつくし、刃も傷みます。悪循環です。
ただし、道具を替えれば解決するわけではありません。P-958でも、使い方を間違えれば刃は傷みます。
そのあたりは別記事に書きました。
時間制限をかけた練習の効果
ある程度慣れてきたら、時間制限をかけて練習しました。
技能試験は40分という制限があります。時間を意識しないで練習していると、本番のプレッシャーに慣れることができません。
時間制限をかけると、焦りが出てきます。その焦りの中で失敗することもあります。でもその失敗の経験が積み重なって、本番でも落ち着いて作業できる状態になっていきました。
それでも、迷ったらやり直したほうがいい
ここまで基準の話を書きましたが、最後に大事なことを書いておきます。
この基準は、無駄に諦めないために知っておくものです。「だからそのまま提出していい」という話ではありません。
理由は2つあります。
① 大丈夫かどうかは、最後まで分からない
判定するのは自分ではありません。試験が終わったあとに、判定する人が見ます。自分が「これくらいなら平気だろう」と思っても、それが合っているかどうかは合格発表まで分かりません。
② 落ちても、理由は教えてもらえない
ここが一番きついところです。
不合格になっても、どこが欠陥だったのかは知らされません。「あの傷が原因だったのか」と確かめる方法がないまま、次に向かうことになります。
半年後にまた同じ判断を迫られたとき、前回の答え合わせができていない。これは相当こたえます。
だから、迷うくらいならやり直す。これが結論です。
見た目がどれだけ不細工でも構いません。求められているのは、きれいな作品ではなく、欠陥のない作品です。限りなくきれいじゃなくても、正確に作る。要は、受かるように作ることです。
ただし、やり直しには時間が要ります。
技能試験は40分しかありません。
やり直すというのは、切って、剥いて、もう一度つなぐということです。その分の時間が残っていなければ、やり直すという選択肢そのものが消えます。
わたし自身、本番で結線を1箇所取り違えました。気づいたのは終了8分前です。切ってつなぎ直して、残りの接続を終えたのが1分前でした。
間に合ったのは、手が速かったからではありません。それ以外の場所で時間を使っていなかったからです。
そしてその「それ以外の場所」を減らしてくれたのが、ここまで書いてきた練習でした。
まとめ
- 傷は「あること」ではなく「折り曲げたときにどうなるか」で判断される
- リングスリーブの下端から10mm以内の絶縁被覆の傷は、欠陥としないと明記されている
- 芯線の傷の主な原因は「握りすぎ」と「刃を入れたまま引っ張ること」
- 対策1は圧倒的な練習量。毎日5〜10分の反復が体に染み込む
- 対策2はわざと傷をつける練習。どこまでやったら傷がつくかを体で覚える
- 時間制限をかけた練習で、本番のプレッシャーにも慣れていく
- 基準は「無駄に諦めない」ために知っておくもの。迷うならやり直す
- やり直せる時間を持って本番に行けるかどうかが、実際の分かれ目

