複線図の書き方は、調べればすぐ出てきます。電源から書いて、接地側を書いて、非接地側を書いて——という手順は、どのサイトでもだいたい同じことが書いてあります。

わたしは、その手順を覚えても書けませんでした。

手順は頭に入っている。なのに、問題を目の前にすると手が止まる。この記事は、そこから抜けるまでに分かったことをまとめたものです。

複線図を書く目的は、「設計図を作ること」ではありません

まず、ここを間違えていました。

複線図は施工の設計図だ、とよく言われます。それは正しいのですが、目的としては弱いです。

技能試験は40分です。この40分のうち、複線図に使えるのは5分ほど。残りの35分で、切って、剥いて、組んで、つなぐところまで終わらせないといけません。

つまり、35分のあいだ、考えている余裕はありません。

だとすると、複線図を書く目的はひとつです。

本番で考えなくて済む状態を、先に作っておくこと。

きれいな設計図を作ることではありません。あとで自分が考えなくて済むように、判断を前倒しで終わらせておく。 それが複線図です。

この目的がはっきりすると、書き方も変わります。

書く順番

順番はこうなります。

① 電源を書く          … L と N の2本。位置はどこでもよい
② 接地側(白)を書く    → ランプ類とコンセントへ
③ 非接地側(黒)を書く  → スイッチとコンセントへ
④ 残ったものが送り線    → スイッチ から ランプ へ

一般的な手順と、大きくは変わりません。ただ、この順番には理由があります。

なぜ、この順番なのか

選んでいないからです。消しています。

順を追って見てみます。

② 接地側(白)は、行き先が決まっています。 ランプ類とコンセント。それ以外に行きません。だから、迷う場面がありません。

③ 非接地側(黒)も、行き先が決まっています。 スイッチとコンセント。コンセントは黒と白のセットで固定なので、ここもセットで書けば終わります。

④ ここまで書いて、残ったものが送り線です。

つまり、④で「これは何色だろう」と考える場面が、そもそも発生しません。②と③で埋めた結果、残ったものがそれだと決まっているからです。

わたしが手順を覚えても書けなかったのは、ここが分かっていなかったからでした。手順を「そういう決まり」として暗記していたので、途中で1か所つまずくと、そこから先が全部止まりました。

消去法だと分かってからは、止まらなくなりました。選ぶ場面がないので、止まりようがないからです。

色は、書く前に決めておきます

複線図は色で書き分けます。わたしが使っていたのは、この3色です。

表しているもの行き先
非接地側スイッチとコンセント
青(水色)接地側(=白線)ランプ類とコンセント
送り線スイッチ から ランプ へ

アース(接地線)が出てくる問題では緑を足しますが、緑はあからさまな例外なので、見れば分かります。 覚える対象には入れなくて大丈夫です。

青を使うのは、紙に白が書けないからです。白線の代わりに青か水色で書きます。

大事なのは、色そのものではありません

この3色でなければいけない、という決まりはありません。大事なのは、毎回同じ色にしておくことです。

複線図で手が止まるのは、回路が難しいからではありませんでした。書くたびに「ここは何色だったか」という小さな判断が発生するからです。 それが1枚の紙の上で何十回も起きます。

色を先に決めてしまえば、その判断が消えます。この話は技能試験の複線図 思考停止の解決方法は「色」だったのほうに、実際に止まっていたときの話として書いています。

色が見分けにくい方へ

わたしは老眼が入ってきていて、細いペンの青と黒が見分けづらくなりました。

やったのは、太いペン(1.0ミリ)で書くことです。書いたあと35分間、その紙を見続けます。細い線だと見間違えて、確認し直すことになります。

一時期は、線の形も変えていました。黒は実線、赤は波線、青は点線。色だけに頼らないほうがいいと思ったからです。

これはやめました。 書いてみると、点線と波線は時間がかかります。そして、かえって紛らわしくなりました。5分で書き切るための図なので、ここは省く側に入ります。

何分で書けばいいか

わたしの場合は、簡単な問題で3分以内、難しい問題で5分でした。

複線図に10分かけてしまうと、残りが30分になります。切って剥いて組んでつないで、最後に確認まで、30分では足りませんでした。複線図で使いすぎた時間は、あとから取り返せません。

その5分に、どうやって収めたのか。時間の作り方だけを取り出して複線図を5分で書く3つのルールに書きました。この記事の手順を、5分で回せる状態にするまでの話です。

きれいに書く必要は、まったくありません

これは、わりと早い段階で知っておいたほうがいいことです。

複線図は採点されません。提出もしません。

技能試験は、欠陥があるかどうかで判定されます。その判断基準は電気技術者試験センターが公表していますが、複線図に関する項目は1つもありません。

技能試験の概要と注意すべきポイント(電気技術者試験センター)

つまり、自分が読めれば、汚くてかまいません。

わたしの複線図は、正直かなり汚いです。でも、見た目に使った時間は1点にもなりません。 その時間は施工に回したほうがいいです。

わたしがつまずいたところ

書き方そのものより、ここでつまずきました。

① 意味を完全に理解してから書こうとした

最初、回路の意味が分かってから書こうとしていました。順番が逆でした。

書きながら理解が追いついてくるほうが、結果として早かったです。1回書くほうが、10回読むより効きます。読んでいる間は理解した気になりますが、手はまったく動くようになっていません。

② まとめてやろうとした

休みの日に3時間やる、というのを何度かやりました。残りませんでした。

効いたのは、1日1問、ランダムに選んで書くというやり方です。5分もかかりません。それでも、続けたぶんは手に残りました。

③ 筆記の複線図を軽く見ていた

筆記に出てくる複線図は、技能の土台になります。捨てなくて正解でした。

ただし、筆記の複線図と技能の複線図では、増えるものがあります。そこで詰まった話は筆記の複線図は書けたのに、技能で書けなくなる理由に分けて書きました。

まとめ

複線図の書き方で大事なのは、手順を覚えることではありませんでした。

目的  … 本番で考えなくて済む状態を、先に作っておく
順番  … 選ぶのではなく、消していく(残ったものが答えになる)
色    … 書く前に固定する。毎回同じにする
時間  … 5分。かけすぎると、あとで取り返せない
見た目 … 採点されないので、汚くていい

どれも、器用さを必要としません。

まだ複線図そのものに手がついていないという方は、第二種電気工事士の複線図が書けない人へから読んでいただくほうが早いと思います。