単線図を初めて見たときのことを、いまでも覚えています。
「なんだ、これは」
線と記号が並んでいるだけなのに、意味がまったく入ってこない。これを自分で書き起こして、その通りに配線しろと言われている。そう理解した瞬間に、うすら寒くなりました。
わたしはバリバリの文系です。しかも、かなり不器用です。プラモデルを最後まで組み上げたことが、たぶん一度もありません。
この記事は、その状態から独学で一発合格するまでに、何で詰まって、何で抜けたかの記録です。

そもそも、なぜ受けたのか
きれいな志望動機はありません。
ひとつは、業務で必要になる案件が出てきたこと。 もうひとつは、資格手当が欲しかったこと。 その2つです。
つまり、電気が好きで受けたわけではありませんでした。ここは正直に書いておきます。同じような理由で受ける方は、たぶん多いと思います。
筆記は通った。40点でした
学科(筆記)については、正直あまり書くことがありません。
過去問を繰り返して、web講義を見た。 やったのはそれだけです。
同じ論点でも、人によって説明の仕方が違います。ある人の言い方でわからなくても、別の人の表現で入ってくることがある。文字だけで理解が追いつかないときは、講義のほうが早いと感じました。
結果は40点でした。合格に必要なのは30点なので、余裕を持って通った形になります。
30点で合格なので、安心材料としてはちょうどよかったです。ギリギリで通るのは、それはそれで怖いですから。
ただ、満点を取る必要はまったくありません。
野球でいえば、フェンスを越えればホームランです。場外まで飛ばす必要はない。6割で受かる試験なので、そこに全力を注ぐより、余った力は技能に回したほうがいいです。
なお、筆記に出てくる複線図は捨てていません。 ここを捨てると、後で自分が困ります。
このとき使った教材と、かかった金額は筆記にかかった費用に全部出しています。
本当の壁は、技能の複線図でした
筆記に受かって、技能の勉強を始めて、そこで初めて事の重さがわかりました。
学科の複線図と、技能試験の複線図は、書き方も色も違います。
これがきつかった。「筆記でやったから大丈夫」と思っていたぶん、余計に混乱しました。
そして、線が増えていくほど、頭の中で何かが絡まっていく。書いている途中で、いま何をしているのかわからなくなる。
テキストを読めばわかった気になる。動画を見てもわかった気になる。でも、次の問題を目の前にすると、また手が止まる。
その繰り返しでした。
転機は「色」でした
抜けたきっかけは、はっきりしています。色を使ったことです。
これは、web講義で教わった考え方でした。
技能の複線図も、筆記と同じ色のルールで書いてしまう。
- 電源(非接地側)は黒
- 接地側は水色
- スイッチから先は赤
現場の実際の色とは違います。でも、試験の複線図は自分が読むためのメモです。構造がわかることが最優先でした。
これで、手が止まらなくなりました。
理由は、あとから考えるとはっきりしています。複線図で止まるのは、回路が難しいからではなく、判断が多いからです。
「ここは黒か、赤か」「この線は何色だったか」──書くたびに小さな判断が発生する。それが積み重なって、手が止まる。
色のルールを固定してしまえば、その判断が消えます。考える回数が減った分だけ、速くなりました。
太さの区別にも同じことをしました。1.6mmと2.0mmを色で分けておくと、紙の上から実際のケーブルに移るときに迷わなくなります。
あとから公表問題を読み直して分かったのですが、白と黒については、そもそも問題用紙の施工条件で決まっていました。自分で決める色は、実は多くありませんでした。→ 複線図でやることはこれだけ|白と黒はもう決まっています
それでも、色だけでは足りませんでした
ただ、色のルールを知っただけでは書けるようになりませんでした。
結局、書いた回数です。
1回書くほうが、10回読むより効きます。読んでいる間は理解した気になりますが、手はまったく動くようになっていません。自転車の乗り方を何冊読んでも乗れないのと同じでした。
だから、毎日書きました。長い時間ではありません。1問だけ、ランダムに選んで書く。 それだけです。
技能の練習も、筆記と並行して始めていました。筆記に受かってから技能を始めていたら、たぶん間に合っていません。
試験当日、問題を開く前のこと
ここが、いちばん書きたかったところです。
技能試験では、開始前に問題用紙と材料箱が配られます。この段階で問題を開くと不正行為になります。 絶対に開いてはいけません。
ただ、問題用紙は、うっすら透けます。
これはわたしが見つけたことではなく、指導されている方は皆さん言っていることです。折られた紙の向こうに、図の輪郭がぼんやり見える。
わたしは、その透けた図をじっと見ていました。
候補問題の番号までは、わかりませんでした。でも、「だいたいこういう形だ」というのは見当がつきました。
なぜかというと、その形を自分の手で何度も書いていたからです。
記憶といっても、覚えようとして覚えた知識ではありません。書いた手の記憶のほうです。輪郭を見た瞬間に、「ああ、この形は書いたことがある」と反応する。
だから、開く前に頭の中で組み立てておくことができました。
練習量は、開始前から効いていました。 これは自分でも意外でした。
なお、それが公表問題の12番だったと分かったのは、試験が終わってからです。 後日、解説動画を見ていて「これだ」と気づきました。当日は番号までは分かっていません。
12番は、接続する線が真ん中に集中する問題です。正直に言って、ごちゃつきました。
わたしはランプレセプタクルと取付連用枠を先に片づけて、残りの時間を接続に回しました。それでも取り違えて、やり直しています。複線図が合っていても、線を見間違えれば同じことです。
線が集まる問題ほど、複線図を見ながら、1本ずつ目で追って結線する。急いでいるときほど、ここを飛ばしたくなります。
結果として、何がよかったか
振り返って、効いたことを3つ挙げます。
① 色で判断を減らしたこと
回路が理解できたから書けるようになったのではありません。迷う回数が減ったから書けるようになりました。
② 毎日書いたこと
まとめて長時間やるより、毎日少しずつのほうが手に残りました。1日1問でも、続けば形になります。
③ 技能を後回しにしなかったこと
筆記と同時に始めていたおかげで、技能の期間に余裕ができました。技能で落ちていたら、次の試験は半年後です。 その状況になったら、わたしはたぶん再挑戦していません。
このときやっていたことの中身は筆記と同時に技能試験の練習も開始に分けて書きました。
逆に、失敗だったこと
複線図を「理解しよう」としすぎた
最初、意味を完全に理解してから書こうとしていました。順番が逆でした。
書きながら理解が追いついてくるほうが、結果として早かったです。
いま、同じところで詰まっている方へ
複線図が呪文に見えるのは、あなたのセンスの問題ではありません。
判断が多すぎるだけです。
判断を減らす方法はあります。色を固定する。手順を固定する。書く回数を増やす。
そのどれも、器用さを必要としません。プラモデルを完成させたことがない人間でも、通りました。
なお、合格したあとには免状の交付申請が待っています。そちらは免状交付申請の流れと注意点にまとめました。
次は、複線図を5分で書くための具体的な手順について書きます。
色のルールをどう決めるか、どの順番で書くか、そして紙の上の色と実際のケーブルの色が食い違う場面をどう処理するか。そこが最後の関門でした。
その前に、筆記の複線図と技能の複線図では何が変わるのかを整理しました。筆記の複線図は書けたのに、技能で書けなくなる理由のほうにまとめています。
このサイトを書いているのがどんな人間かは、プロフィールに書きました。
DIYの説明書で絶望する程度には不器用です。
