学科(筆記)は通りました。落とした問題のなかには配線図もありましたが、複線図そのものは書けているつもりでした。

その勢いのまま技能試験の練習に入って、最初の1問で手が止まりました。

「あれ、書けない」

さっきまで書けていたはずのものが、書けない。理解が抜けたわけではないのに、ペンが進まない。

同じところにいる方に、先にお伝えしておきます。これは、あなたの理解が足りないから起きていることではありません。 筆記と技能では、複線図に求められるものがはっきり変わります。そして、変わる場所は3つだけです。

この記事は、その3つがどこなのかという地図です。

まず、筆記の複線図は間違っていません

はじめに、ここをはっきりさせておきたいと思います。

筆記でやった複線図は、技能の土台としても正しいです。 わたしは筆記の複線図を捨てませんでした。捨てなくてよかったと、いまでも思っています。

わたしが筆記でやっていたのは、3色で書き分けるやり方でした。

表しているもの行き先
非接地側スイッチとコンセント
接地側(=白線)ランプ類とコンセント
スイッチからランプへの送り線

青は「白線」を書くための色です。紙に白は書けないので、青や水色で代わりにします。

この3色の決め方は、講座でもテキストでも、だいたい同じことを言っています。特別なやり方ではありません。 そして、これが効くのには理由があります。

色を先に決めてしまえば、「ここは何色だったか」と考える回数が減るからです。 複線図で手が止まるのは、回路が難しいからではなく、書くたびに小さな判断が発生するからでした。この話は複線図の思考停止を解決したのは「色」だったのほうに詳しく書いています。

ひとつだけ、面倒だったところ

筆記の配線図の問題では、電線の本数がいちばん少なくなるようにという条件がつくことがあります。

このとき考えるのが、黒線(非接地側)をどこに入れるか、です。

わたしは最初、「電源から一番近いところに入れれば本数が減る」と覚えていました。これが違いました。

一番遠いところに入れたほうが、本数が少なくなる場合があります。 器具の並び方によって変わります。近いほうが正解のときもあれば、遠いほうが正解のときもある。

では、どうやって見分けるのか。両方書いてみれば分かります。 入れられる場所が2か所しかないなら、2種類書いて、線の数を数えればいい。それで確実に答えは出ます。

でも、そんな時間はありません。

これが面倒の正体でした。「正しい答えを出す方法」はあるのに、「間に合う方法」がない。 判断を迫られているのに、判断するための材料が、その場では揃わないのです。

あとから振り返ると、これがすでに前ぶれでした。技能で起きたことは、これと同じことが3か所に増えただけだったからです。

技能に入ると、増えるのは3つです

筆記から技能に移ったときに増えるものを、わたしなりに数えました。3つでした。

① パイロットランプ
② 3路スイッチ・4路スイッチ
③ 書いた線の色と、実際につなぐケーブルの色が違う ← 一番きつい

多いか少ないかで言えば、少ないと思います。でも、この3つで止まります。 順に見ていきます。

① パイロットランプ

スイッチに小さなランプがついているものです。玄関や浴室のスイッチで、暗いときに光っているあれです。

同じ「パイロットランプ」でも、点き方が何通りかあります。常に点いているもの(常時点灯)と、スイッチを入れたときに一緒に点くもの(同時点灯)では、線の入り方が変わります。器具の名前を見ただけでは書けません。

わたしの場合、常時点灯のほうは、わりとすぐ書けるようになりました。 止まったのは同時点灯です。

同時点灯には、「スイッチを入れる → 点く」という動きがあります。書ける方は、そこを動きとして追えるのだと思います。この配線で合っているか。白線はここに絶対入る。そういう感覚で手が進んでいく。

わたしには、その思考がありませんでした。

書けないというより、書いたものが合っているかどうかを、自分で確かめられない。 そこで止まりました。

② 3路スイッチ・4路スイッチ

階段の上と下、どちらからでも同じ照明を消せるやつです。

書けない理由は、はっきりしています。線が交差するからです。

2路(ふつうのスイッチ)までは、電源から器具へ、線がまっすぐ向かいます。3路になると、スイッチとスイッチの間を2本の線が行き来します。4路が入ると、そこにもう1つ関所が増えます。

紙の上で線が交差すると、いま自分がどの線を書いているのかが分からなくなります。

これは筆記のときには起きにくい現象です。筆記は選択肢を選ぶだけなので、線を全部引ききらなくても答えは出ます。技能は、全部引かないと先に進めません。

ただ、正直に書いておきます。わたしは3路・4路のほうは、途中から書けるようになりました。

線は多いのですが、やっていることは言葉で説明できます。言葉で説明できるものは、手順にできます。 そこが越えられた理由でした。

さっきの同時点灯は、それができませんでした。同じ人間なのに、片方は越えられて、片方は越えられない。 ここは、あとでもう一度出てきます。

③ 書いた線の色と、実際につなぐケーブルの色が違う

3つのうち、これが一番難しいところです。

複線図の色は、あくまで「役割」を表しています。黒は非接地側、白(青)は接地側、赤は送り線。これは紙の上の話です。

一方、手元にあるのは実物のケーブルです。2芯(2C)には白と黒しか入っていません。3芯(3C)には白・黒・赤が入っています。

ここで何が起きるか。紙に「赤」と書いた線を、赤いケーブルでつなぐとはかぎりません。

2芯しか使えない区間で送り線が必要になれば、白い線を送り線として使うことになります。紙の上は赤、手元は白。同じ1本なのに、色が食い違います。

この状態で結線に入ると、頭が一瞬止まります。

これには名前がついていて、ストループ効果と呼ばれています。「みどり」という字が赤い色で書いてあると、読むのに一瞬つまずく、あれです。色と意味が食い違うと、誰でも遅くなります。 訓練しても、完全にはなくなりません。

技能試験は40分です。その一瞬の停止が、何十回も起きます。

わたしは本番で、実際に圧着する場所を取り違えました。 気づいたのが終了8分前。切ってつなぎ直して、完了したのが1分前です。詰まったのは、まさにこの領域でした。

どこで止まるかは、人によって違います

3つ並べましたが、全員がこの3つで止まるわけではありません。

3路・4路で止まる方は、とても多いと思います。でもわたしは、そこは越えられました。逆に、同時点灯は「そういうものだ」で通り過ぎる方もいます。わたしはそこで止まりました。

越えられるかどうかが、感覚に任されています。 言いかえると、どこで止まるかが運になっているということです。

これは「センスがある人とない人がいる」という話ではありません。誰が通っても同じ結果になる道が、そもそも用意されていない、という話です。

止まる場所が人によって違うので、「どの候補問題が難しいか」も人によって逆になります。他人の難易度表ではなく、自分が止まる問題を見つけて、そこを厚くやるほうが確実です。不得意な候補問題は、消すことができます|13問は先に公表されています

本当の理由は、「正確に書くためのルールがない」ことです

ここからが、この記事で一番書きたかったことです。

上の3つを見て、こう思われたかもしれません。「じゃあ、そのルールを覚えればいいのでは」と。

わたしもそう思って、テキストを読み、動画を見ました。書き方の手順は、いくらでも見つかります。①電源を書く、②接地側を書く、③非接地側を書く……という流れは、どこでも同じことが書いてあります。

それでも書けませんでした。

理由が分かったのは、だいぶあとです。

複線図が書けないのは、ルールを覚える必要があるうえに、正確に書くためのルールがないからです。

書き方の「流れ」は世の中にあります。でも、「毎回まったく同じように書くための決まりごと」は、どこにも用意されていません。

たとえば、こういうことです。

その場で決めているもの起きること
ジョイントボックスをどのくらいの大きさで描くか小さく描いた日は、書き込む場所がなくなる
圧着の刻印をどう書くか(○か、マルか、●か)日によって違うので、読むときに解釈が要る
差込形コネクタとリングスリーブを、どう書き分けるか書いていない日は、施工中に思い出す作業が発生する
実際のケーブルの色を、どこに書くか書く場所を探す時間が毎回発生する

どれも、答えが決まっていません。 教える側からすれば「自分の書きやすいように」となる部分です。

でも、決まっていないということは、その場で決めているということです。 そして、その場で決めるということは、考えているということです。

複線図に5分しかかけられない試験で、考える場面が10か所あれば、それだけで手が止まります。

わたしが技能で書けなくなった理由は、これでした。 筆記のときは、答えを選べればよかった。技能では、同じ図を毎回同じ精度で書き上げないといけません。そこを支える決まりごとが、存在していなかったのです。

ルールがないなら、自分で作ればいい

結論は、拍子抜けするほど単純でした。

ないなら、自分で決めてしまう。

きれいに書くためのルールではありません。判断を発生させないためのルールです。

複線図は採点されません。提出もしません。欠陥の判断基準を最初から最後まで読んでも、複線図の項目は1つもありません。自分が読めれば、汚くてかまわないのです。

だとすれば、目指すところはひとつです。

本番で、複線図を「考えて書く」のをやめる
 ↓
決めておいたルールに、乗せるだけにする

わたしがやったのは、たとえばこういうことです。

  • 記号を毎回同じにする。 丸を、ある日は「○」、別の日は「●」と書き分けない
  • 書く場所を先に決めておく。 本番でどこに書こうか探さない
  • 分かりきったことでも書く。 書くのは数秒、思い出すのは毎回

上品なやり方ではありません。書く手間はむしろ増えます。

でも、書く手間を増やしたぶん、本番で考える時間がゼロになりました。 遠回りをして、結果として速くなる。わたしはこれを、プラモデル戦略と呼んでいます。説明書どおりに組むだけの状態を、自分で先に作っておく、という意味です。

プラモデルを最後まで組み上げたことがない人間の言うことなので、あまり格好はつきません。ただ、器用さも、速さも要りませんでした。 ルールに乗るだけなら、不器用でもできます。

まとめ

筆記の複線図が書けたのに技能で書けなくなるのは、能力の問題ではありません。

① パイロットランプ    … 器具の名前だけでは書けない
② 3路・4路スイッチ    … 線が交差して、いまどこを書いているか分からなくなる
③ 紙の色と実物の色のズレ … 色と意味が食い違うと、誰でも一瞬止まる

増えるのはこの3つです。そしてどこで止まるかは、人によって違います。 感覚で越えられる場所と、越えられない場所が、人によって入れ替わるからです。

詰まる本当の原因は、それを毎回同じように書くための決まりごとが用意されていないことでした。

用意されていないものは、自分で用意するしかありません。そして、それは試験の前に終わらせておけます。

まだ複線図そのものに手がついていないという方は、第二種電気工事士の複線図が書けない人へから読んでいただくほうが早いと思います。

技能の練習をいつから始めるかで迷っている方は、筆記と同時に技能試験練習も開始が正解のほうに書きました。

この3つの解き方——13問分の型と、例外の一覧と、紙の色と実物の色が食い違う場面の一覧は、いま1本にまとめているところです。できあがったら、ここにも置きます。