わたしは、複線図を5分で書いています。 簡単な問題なら3分ほどです。
ただ、最初からそうだったわけではありません。書けなかったころは、1枚に20分かかっていました。
技能試験は40分です。20分使ったら、残りは20分。切って、剥いて、器具に付けて、つないで——そこまで20分では、どうやっても終わりません。
20分が5分になりました。手が速くなったわけではありません。 器用にもなっていません。書いている途中で「考える場面」を、先に全部つぶしただけです。
この記事は、何をつぶしたら5分になったのかを、順番に書いたものです。3つのルールしかありません。
「5分」は目標ではありません。40分から逆算した枠です
5分という数字は、感覚で決めたものではありません。
わたしの本番での配分は、こうでした。
複線図 5分 ← ここ 切断 3〜5分 組立〜結線 25分 ───── 小計 33〜35分 余白 5〜7分 ───── 合計 40分
下の25分は、削れません。 手を動かす時間なので、短くしようとすると雑になります。雑になれば、欠陥が出ます。
削れないところが先に決まっているので、上が決まります。 複線図と切断の2つで8分から10分。複線図はそのうちの5分です。
この「余白5〜7分」が、実際に効きました
わたしは本番で、結線する芯線を取り違えています。切ってつなぎ直して、終了1分前に間に合いました。
その修正時間は、この余白から出ています。
複線図に10分使っていたら、余白はありません。 間違いに気づいた時点で終わっていました。
つまり5分というのは、「速く書くための目標」ではなく、「間違えても間に合うために空けておく枠」です。ここが、わたしの中では一番大きい話でした。
10分かかる人が遅いわけではありません
念のため書いておきます。書くのが遅いのではありません。
わたしが20分かかっていたとき、線を引く手はふつうに動いていました。時間を食っていたのは、線と線のあいだで止まっている時間です。
1本引く → 次はどこだろう → 考える → 1本引く → この色でいいのか → 考える
この「考える」が、1枚の中に何十回もありました。1回は数秒でも、何十回あれば分単位になります。
この時期に「そもそも複線図は書かなくていい」という話も目に入ってきます。書かずに受かる人はいますが、真似はできません。理由は複線図を書かない人の真似は必要なし。正確な複線図が合格の近道に書きました。
だから、5分にするためにやることは1つです。
選ぶ場面を、書く前に全部つぶしておく。
以下の3つのルールは、全部そのためのものです。
ルール1|3色の行き先を固定する(迷う時間が消えます)
まず、ここです。わたしが一番時間を食っていたのは、「この線はどこへ行くんだったか」を毎回考えていたところでした。
でも、行き先は最初から決まっています。覚えることは、この3行だけでした。
| 色 | 表しているもの | 行き先 |
| 白(水色で書く) | 接地側 | 必ずランプ類に入る / コンセント |
| 黒 | 非接地側 | スイッチ / コンセント |
| 赤 | 送り線 | スイッチ から ランプ へ |
紙に白は書けないので、白線は水色で書きます。
この3行が、そのまま5分の土台になります。 行き先が決まっていれば、線を引くときに選ぶ場面が発生しません。
コンセントは、黒と白のセットで固定
表を見ると、コンセントだけが白にも黒にも出てきます。ここはセットで覚えてしまうほうが早いです。
コンセントには、黒と白が両方入る。必ずセット。
セットで固定してあるので、コンセントが出てきたら2本まとめて引いて終わりです。片方ずつ考える必要がありません。
裏返すと、もっと短くなります
上の表を裏返すと、こうなります。
白は、スイッチに入らない 黒は、ランプ類に直接入らない 赤は、スイッチとランプの間にしかない
わたしには、こちらのほうが効きました。
「どこへ行くか」を思い出すより、「そこには行かない」で消すほうが、手が止まりにくかったからです。
緑(アース)は、覚えなくていいです
接地極付きのコンセントが出る問題では、緑(アース)が入ります。
ただ、緑はあからさまな例外なので、見れば分かります。 わたしは覚える対象に入れませんでした。覚えるものを増やすと、そのぶん考える場面が増えます。
ひとつだけ、この表の外があります
パイロットランプのように、点灯の仕方が問題で指定される器具は、この表だけでは決まりません。常時点灯なのか、同時点灯なのかで、線の入り方が変わるからです。
そこは別の話になるので、この記事では触れません。それ以外の器具は、上の3行で足ります。
ルール2|書く順番を毎回同じにする(戻る時間が消えます)
行き先を固定しても、まだ5分にはなりませんでした。書くたびに順番が違っていたからです。
順番も決めてしまいます。この4段です。
① 器具を置く … ランプ、スイッチ、コンセント、電源 ② 白(水色)を引く … ランプ類とコンセントへ ③ 黒を引く … スイッチとコンセントへ ④ 残ったところが赤 … スイッチ から ランプ へ
上から順にやるだけです。戻りません。
① 器具と電源を、先に置く
線から書きません。器具が先です。
問題用紙の単線図にあるもの——ランプレセプタクル、引掛シーリング、スイッチ、コンセント、そして電源——を、そのまま自分の紙に置きます。
位置は単線図とだいたい同じでかまいません。きれいに並べる必要もありません。
行き先が紙の上に無いと、線は引けません。 線を引きながら「この先どこに行くんだろう」と探していたのが、20分かかっていた原因のひとつでした。
② 白(水色)から引く
3色のうち、白がいちばん行き先のはっきりしている色です。ランプ類とコンセント。それ以外に行きません。
だから最初に持ってきます。 迷う要素が一番少ない色から手を動かすと、そのまま勢いで次に行けます。
③ 黒を引く
黒はスイッチとコンセント。②で水色を入れたコンセントに黒を足せば、そこは完成です。
④ 残ったところが赤
ここが、時間の面でいちばん効きます。
④で「これは何色だろう」と考える場面が、そもそも発生しません。②と③で埋めた結果、残っているところが送り線(赤)だと決まっているからです。
選ぶのには時間がかかりますが、消すのには時間がかかりません。
この順番になる理由のほうは、複線図の書き方(技能試験で失敗しない手順)に厚めに書いています。
ルール3|練習を1色ずつに分ける(考える時間が消えます)
ルール1と2を決めても、すぐには5分になりませんでした。
原因は分かりやすいところにありました。1枚の中で、白と黒と赤を全部やろうとしていたからです。
白を引きながら「次の黒はどこだったか」を考えている。黒を引きながら「赤が足りるだろうか」と考えている。順番は決めたのに、頭の中では3つ同時に処理していました。
そこで、練習のほうを分けました。
1段目 白(水色)だけを、書いて書いて書きまくる 2段目 その紙を使って、黒だけを書いて書いて書きまくる 3段目 残ったところに、赤を書いて書いて書きまくる
1段ずつです。1段目が終わるまで、2段目には行きません。
1段目|白だけを書く
メモ用紙に器具を置いて、水色だけを引きます。 黒も赤も書きません。
1色だけなので、1枚はすぐ終わります。だから何枚も書けます。同じ回路も違う回路も混ぜて、とにかく水色だけを引き続けました。
やっているうちに、考えなくなります。 ランプ類とコンセントに引く、それだけなので、そのうち手が勝手に動きます。
ここで目指すのは、うまく書くことではありません。「考えなくてよくなること」です。
2段目|その紙を使って、黒を書く
1段目で書いた紙を、捨てないでください。
白だけが引いてある紙が、何十枚も手元にあるはずです。その紙の続きに、黒を引きます。
器具を書き直す手間がありません。白の位置ももう決まっています。黒のことだけを考えればいい状態が、勝手にできています。
これも書きまくります。スイッチとコンセントに引く、それだけです。1段目と同じで、そのうち考えなくなります。
3段目|赤を書く
同じです。白と黒が入った紙に、残ったところへ赤を引きます。
このとき、はっきりします。
赤は、選ぶものではありませんでした。残ったところが赤でした。
頭で理解するのと、手が納得するのは別です。何十枚も「残ったところ」を引いていると、手のほうが先に覚えます。
紙は、3回使えます
| 段 | 何を書くか | 使う紙 |
| 1段目 | 器具 + 白(水色)だけ | 新しいメモ用紙 |
| 2段目 | 黒だけ | 1段目で書いた紙 |
| 3段目 | 赤だけ | 2段目まで書いた紙 |
1枚の紙を3回使います。 器具を書き直す時間も、位置を決め直す時間もかかりません。
紙はメモ用紙で十分です。この練習でつくっているのは、作品ではなく手の動きです。
この3つで、なぜ5分になるのか
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
複線図を5分で書くというのは、5分ぶんの集中力で3色を処理することではありません。それだと、疲れている日には崩れます。本番は、いちばん疲れる日です。
そうではなくて、こうなります。
白 … 考えずに引ける(行き先が固定・1段目で手が覚えている) 黒 … 考えずに引ける(行き先が固定・2段目で手が覚えている) 赤 … 考える必要がない(残ったところなので)
3つとも「考える時間ゼロ」なので、足しても増えません。
行き先を固定するのも、順番を固定するのも、1色ずつ練習するのも、やっていることは全部同じでした。書く前に決めておいて、本番で考えないようにしただけです。
1色ずつの練習は、遠回りに見えます。実際、遠回りです。でも、この遠回りをしておくと、本番で考える時間がゼロになります。
器用な人は、その場で判断できるので遠回りが要りません。わたしは不器用な側なので、同じ土俵で速さを競っても勝てませんでした。だから、土俵のほうを変えました。
5分は、速く書いた結果ではなく、考えなくてよくなった結果です。
5分を超えてしまうのは、この3つでした
練習しているうちに、時間が延びる原因が見えてきました。
① 1枚まるごと書こうとしている
さきほどの話です。3色を同時に処理しようとすると、どこかで必ず止まります。
しかも、止まった原因が自分で分かりません。 白でつまずいたのか、黒でつまずいたのか、赤で足りなくなったのかが混ざるからです。混ざると、直しようがありません。
1色ずつなら、詰まった場所がその色に限定されます。
② 途中で戻っている
時間を食うのは、書く作業ではなく、戻る作業でした。
引いた線を消して引き直す。前の色に戻って足す。これが1回あるだけで、1分は飛びます。
戻らないためには、上から順に、1つずつ確実に終わらせるしかありませんでした。①器具が終わってから②白へ、②白が終わってから③黒へ。追い越さない、戻らない。
③ きれいに書こうとしている
これは早めに知っておいたほうがいいことです。
複線図は採点されません。提出もしません。
技能試験は欠陥の有無で判定されますが、その判断基準に複線図の項目は1つもありません。
つまり、自分が読めれば、汚くてかまいません。
わたしの複線図は、正直かなり汚いです。でも、見た目に使った時間は1点にもなりません。 その時間は、下の25分に回したほうがいい時間でした。
5分は、最初から目指さないでください
いま複線図がまったく書けないという方は、ルール3の1段目だけをやってみてください。
白(水色)だけです。黒も赤も書きません。
そして、時間は計らなくていいです。
5分は、3色が考えずに引けるようになった結果として、あとから出てくる数字です。先に時間のほうを縮めようとすると、雑になるだけでした。 わたしはそれで一度失敗しています。
白は3色の中で、いちばん行き先がはっきりしています。最初にできるようになる色が、いちばん簡単な色というのは、続けるうえで悪くないと思います。
複線図そのものに手がついていないという方は、第二種電気工事士の複線図が書けない人へのほうから読んでいただくほうが早いかもしれません。
色で書き分けること自体でつまずいていたときの話は、技能試験の複線図 思考停止の解決方法は「色」だったに書いています。
まとめ
なぜ5分か … 40分から逆算。組立〜結線の25分は削れないので、上が5分に決まる 5分に収めると、余白が5〜7分残る=間違えても直せる 5分にする3つのルール ルール1 3色の行き先を先に固定する 白=ランプ類とコンセント/黒=スイッチとコンセント/赤=スイッチからランプ コンセントは黒+白のセット。緑は見れば分かる例外 ルール2 書く順番を毎回同じにする ① 器具を置く → ② 白 → ③ 黒 → ④ 残ったところが赤 ルール3 練習を1色ずつに分ける 白だけ書きまくる → その紙で黒 → その紙で赤 超える原因 … 1枚まるごと書こうとする/途中で戻る/きれいに書こうとする
5分は、速く書いた結果ではありません。考える場面を、先につぶした結果です。
だから、器用さは要りませんでした。
5分のあとに残る、25分の話
ここまでが、複線図を線として5分で書けるようにするところです。
ただ、これで終わりではありませんでした。
線が5分で引けるようになっても、そのあとの25分で、まだ手が止まったからです。
- 紙に引いた線の色と、実際に使うケーブルの色が、いつも同じとは限りません。 とくに3芯のところで、同じ色どうしをつなげない場面が出ます
- どこをリングスリーブで留めて、どこを差込形コネクタにするか。 これを施工中に判断していると、そのたびに手が止まります
- 圧着の刻印(○・小・中)をどこで決めるか。 ここを間違えると、その1か所で不合格になります
わたしが本番で芯線を取り違えたのも、この領域でした。切ってつなぎ直して間に合ったのは、5分の複線図の中に、そこまで書き込んであったからです。
つまり、5分の複線図は、そこで終わりではなく、残り25分ぶんの答えを先に紙へ移しておく作業でした。
その「紙に全部書いておいて、本番は拾って組むだけにする」やり方を、候補問題13問ぶんまとめて有料noteにしています。
- 複線図に書き込む3周(役割 → 実際のケーブルの色 → 結線方法と刻印)
- 刻印を足し算で出す方法
- 3路・4路をどう処理するか
- 候補問題13問の、実際に書いた図
この記事の3つのルールだけでも、複線図は5分で書けるようになります。 その先で、残り25分のほうまで止まらなくしたい方に向けたものです。
▶ 有料note(準備中)
